パチンコ台の製造……狂犬の群れの中にあって……
2010年、パチンコ台の組み立て及び検査の仕事に就いた。
以前経験があったので、こなせる自信があったのだ。
僕が配属されたのは、主に検査の業務を行っている部署だった。
パチンコをやられる方はご存じのことと思うが、「役モノ」と呼ばれる台の中央部に取り付けられている玉の動きを左右するための仕掛けの部分のことであるが、その「役モノ」の外観検査をひたすら8時間こなす仕事に従事していた。
慣れてしまえば、実に簡単な仕事だった。普通この手の仕事は短期で終わってしまうのが常であるが、僕はなぜか長期で雇ってもらえた。収入もそこそこで、とてもおいしい仕事だったと今でも思う。
しかし、そんな平穏な日々は1年程で終わりを迎える…。
ある日僕は、異動を命ぜられたのだ。
そこは以前の部署同様に検査の業務を行っていたのだが、扱う製品は完成されたパチンコ台そのものである。所謂最終検査というやつだ。まあ仕事そのものは以前の部署同様、慣れれば簡単だった。しかし問題はその部署の人間たちだった。
従事している人間の8割がたは、ヤンキー上がり(現役?)だったのだ。
彼らヤンキーは一般的に「体制に対する反抗者」というイメージがあることと思うが、実際に僕が相見えた彼らは、そんな上等な連中ではなかった……。
彼らを支配している価値観は「強者か弱者か」……それだけである。彼らにとって他者とは「自分より強いか弱いか」……ただそれだけの存在でしかないのだ。
当然彼らは自分たちは強者であることを望んでいる。そのためには他者は弱者でなくてはならない。よって彼らはコミュニティにおいて恣意的に弱者を創り上げる。そしてどうしても敵わない強者(例えば上司)に対しては、その権威を傘に着るために媚びを見せさえする(権威を傘に着れば、それだけで強く見えるからだ)。
何のことはない。職場によくいるお局様と同レベルの存在でしかないのだ……。
そんなコミュニティにあっては、僕のような地味な男は当然弱者に仕立て上げられる。
身に覚えのないミスを叱責される、ちょっとした挙動や仕草をからかわれる、普通にやっているのに「遅い」と叱責される……コミュニティの弱者である僕は常に不当に扱われた。更には以前の部署で仲の良かったものまで、手のひらを返したように僕を馬鹿にし始めたのだ……。
耐えられなくなった僕は上司に退職を願い出た。しかし辞められては困るということだったので、ちょうど人を欲しがっている別部署へ配置転換となった……。